06/25: クラシック・カメラで撮影する海野宿
Category: 趣味
Posted by: toirocoffee
先日、「木曾漆器祭」へ遊びに行ってきた話しを当ブログでしたと思います。
その会場で「ふるもの市」という、木曾平沢の古民家から見つかった様々なものを販売してるコーナーがありました。
古い箪笥や、ソロバン、裁縫道具、等々なかなか趣のあるモノがたくさんあったのですが、その中で私が見つけたのが一台のカメラ。
「オリンパス pen D3」です。
一時期ジャンクなクラシック・カメラの修理にはまっていたことがありまして、不動の「pen D3」を見つけて、「やや、これは私に修理して欲しいと言っておるぞ」という天の声に導かれるまま、値段交渉の末に私の手に渡ってきたという次第です。
何でもこのカメラ、すぐご近所のおじいさんが所有していたカメラだそう。そのおじいさんは最近他界されてしまったそうです。そんな話しを聞かされておりましたので、これは尚更きちんと蘇らせてあげなければ!という使命感にも似た気持ちで購入させていただきました。
1965年発売の「pen D3」。ほぼ私と同世代の生まれということになります。
「pen」という名称は、オリンパスが最近のデジカメにも使っておりますので、若い世代の方にも知られているかと思います。その元祖がこの「pen」のシリーズです。35mmフィルムを縦に半分に割ったサイズである「ハーフサイズ」で撮影するため、24枚撮りのフィルムで48枚撮影ができます。ハーフサイズですから、ファインダーは縦長。縦構図の写真が大好きな自分にはぴったりなカメラです。
経済的であり、カメラ本体も手ごろな値段だったため、かなりのヒット作となったカメラですから、「父親が使っていた」という方も多いのではないでしょうか。
たくさんのバリエーションが販売された中でも、このD3はフル・マニュアルで操作するかなりマニアックなモデルです。
修理は「カニ目レンチ」と呼ばれる専門の道具を使ってレンズの先端から分解していきました。前面に付いている「前玉」と呼ばれるレンズを取り外すと、シャッター羽が見えます。シャッターが切れなくなってしまったpenシリーズの大半は、このシャッター羽が固まってしまっているのです。今回もベンジンで丁寧にクリーニングしてあげたところ、シャッターが動くようになりました。
ボタン電池で動作する露出計がトップカバーに内蔵されているのですが、これが動いてくれないと修理はやっかいです。電池蓋をおそるおそる開けてみると、パンパンに膨れ上がった電池が出てきました。爆発してしまっていたら電解液まみれになっていたところです。
当時の電池は「MR44」ですが、今では製造されておりませんので「LR44」電池で代用します。電圧が若干違うので露出が多少ずれますが、動けばよしとしましょう。電池を入れると露出計は生きている模様。ホッとした瞬間です。
そしてクラカメの修理で一番やりたくない作業・・・
古くなってぼろぼろになったモルトの除去です。本体と裏ぶたの隙間から光線が入らないようにするための遮光スポンジなのですが、これは製造から50年も経過したカメラともなれば確実にぼろぼろになっています。綿棒にベンジンをつけてツンツンしながら掃除します。
新しいモルトは通販などで購入することも可能ですが、私は100円ショップで買った習字用のマットを切って使います。細くきったマットに両面テープをつけて、カメラ本体の内側に貼っていくのです。
これで一応は修理完了。フィルムを装填してスタンバイOK!
しかし、24枚撮りのフィルムが1本¥540とは・・・。フィルムは一部のマニアのためのものになってしまったようです(泣)
実写はどこでしようかなあと考えていたところ、週末に栃木県にある妻の実家へ行くことになったため、その道中で撮影スポットになりそうなところを検討します。すぐに思いついたのが、行ってみたかった東御市の海野宿。木曾平沢で入手したカメラの試写にはうってつけの場所です。
ちなみにWikipediaでの海野宿の解説を抜粋すると・・・
「海野宿(うんのじゅく)は、長野県東御市本海野にある、江戸時代における北国街道の宿場の呼称である。現在も通りの両側に約100棟の家が連なる歴史的な町並みを形成しており、「日本の道100選」のひとつにも選ばれている」
・・・ということだそうです。
妻と二人、海野宿を散策して蕎麦を食べて、ちょっとした寄り道というには十二分に楽しく過ごすことができました。
帰宅後にフィルムを「カメラのキタムラ」に持込みます。プリントすると1枚あたり約¥40掛かりますので、現像代プラス¥1、920ですから、万がいち光線漏れ等で写真が全滅していたら悲し過ぎますので、現像に加えて、フィルムからスキャンしたデジタルデータをCDに焼いてもらうサービスを注文しました。プリントをしない分だけ割安で、総額で¥1,188ですみました。
で、現像から上がってきたデータを見てビックリ!素晴らしいではないですか!
50年も前のレンズが描き出す世界のノスタルジックな味わいは、現代のパキパキにシャープで鮮やかなデジタルカメラでは決して描きだすことのできない世界です。
メインの通りこそ舗装されていますが、用水路を挟んで土の歩道があります。風情たっぷり。
この日は薄曇りでしたが、新録がとてもきれいでした。青空が拡がった海野宿にも行ってみたい!
郵便ポストでさえ風情があります。
硝子風鈴の涼しげな音色に誘われて、思わず立ち寄ってしまったガラス工房の「橙(だいだい)」さん。
2階はカフェになっていました。次回はぜひともカフェにも寄りたいっ!
素敵なたくさんの作品たちが、光に照らされてそれはそれは美しい。
我が家用にはブルーの気泡入りのグラスをペアで購入。甘酒を入れて飲むのです!
ガラス玉たちも美しい。
「pen D3」は、レンズに入ってくる光の量を「絞り」と「シャッタースピード」を設定して使います。露出計に表示される数字が参考にはなりますが、それらの組み合わせで写りが変わりますので、自分で考える必要があります。失敗すれば真っ白だったり真っ黒だったりする写真が出来上がります。
もっと困難なのはピント合わせ。このカメラはオートフォーカスではありませんし、ピントを確認する術さえないのです。設定は「目測」で。つまりはカメラから被写体までの距離を、自分でピントリングを動かして、カメラに刻まれているメートルの表示にあわせるのです。
オートマチックな時代にはまったくもってややこしいカメラなのですが、これらがドンピシャ自分の思い通りになったときの喜びは何とも言えません。現像してみるまで結果がわからないところも高揚感を刺激するのです。
いや、久しぶりのpenでの撮影、面白過ぎました。しばらくは旅にはこのクラカメを持ちだすことになりそうです。
元の持ち主だったおじいさんへ。これからも大切に使わせていただきます。
「ふるもの市」のスタッフのみなさんへ。すてきな出会いに感謝します。ありがとう!
その会場で「ふるもの市」という、木曾平沢の古民家から見つかった様々なものを販売してるコーナーがありました。
古い箪笥や、ソロバン、裁縫道具、等々なかなか趣のあるモノがたくさんあったのですが、その中で私が見つけたのが一台のカメラ。
「オリンパス pen D3」です。
一時期ジャンクなクラシック・カメラの修理にはまっていたことがありまして、不動の「pen D3」を見つけて、「やや、これは私に修理して欲しいと言っておるぞ」という天の声に導かれるまま、値段交渉の末に私の手に渡ってきたという次第です。
何でもこのカメラ、すぐご近所のおじいさんが所有していたカメラだそう。そのおじいさんは最近他界されてしまったそうです。そんな話しを聞かされておりましたので、これは尚更きちんと蘇らせてあげなければ!という使命感にも似た気持ちで購入させていただきました。
1965年発売の「pen D3」。ほぼ私と同世代の生まれということになります。
「pen」という名称は、オリンパスが最近のデジカメにも使っておりますので、若い世代の方にも知られているかと思います。その元祖がこの「pen」のシリーズです。35mmフィルムを縦に半分に割ったサイズである「ハーフサイズ」で撮影するため、24枚撮りのフィルムで48枚撮影ができます。ハーフサイズですから、ファインダーは縦長。縦構図の写真が大好きな自分にはぴったりなカメラです。
経済的であり、カメラ本体も手ごろな値段だったため、かなりのヒット作となったカメラですから、「父親が使っていた」という方も多いのではないでしょうか。
たくさんのバリエーションが販売された中でも、このD3はフル・マニュアルで操作するかなりマニアックなモデルです。
修理は「カニ目レンチ」と呼ばれる専門の道具を使ってレンズの先端から分解していきました。前面に付いている「前玉」と呼ばれるレンズを取り外すと、シャッター羽が見えます。シャッターが切れなくなってしまったpenシリーズの大半は、このシャッター羽が固まってしまっているのです。今回もベンジンで丁寧にクリーニングしてあげたところ、シャッターが動くようになりました。
ボタン電池で動作する露出計がトップカバーに内蔵されているのですが、これが動いてくれないと修理はやっかいです。電池蓋をおそるおそる開けてみると、パンパンに膨れ上がった電池が出てきました。爆発してしまっていたら電解液まみれになっていたところです。
当時の電池は「MR44」ですが、今では製造されておりませんので「LR44」電池で代用します。電圧が若干違うので露出が多少ずれますが、動けばよしとしましょう。電池を入れると露出計は生きている模様。ホッとした瞬間です。
そしてクラカメの修理で一番やりたくない作業・・・
古くなってぼろぼろになったモルトの除去です。本体と裏ぶたの隙間から光線が入らないようにするための遮光スポンジなのですが、これは製造から50年も経過したカメラともなれば確実にぼろぼろになっています。綿棒にベンジンをつけてツンツンしながら掃除します。
新しいモルトは通販などで購入することも可能ですが、私は100円ショップで買った習字用のマットを切って使います。細くきったマットに両面テープをつけて、カメラ本体の内側に貼っていくのです。
これで一応は修理完了。フィルムを装填してスタンバイOK!
しかし、24枚撮りのフィルムが1本¥540とは・・・。フィルムは一部のマニアのためのものになってしまったようです(泣)
実写はどこでしようかなあと考えていたところ、週末に栃木県にある妻の実家へ行くことになったため、その道中で撮影スポットになりそうなところを検討します。すぐに思いついたのが、行ってみたかった東御市の海野宿。木曾平沢で入手したカメラの試写にはうってつけの場所です。
ちなみにWikipediaでの海野宿の解説を抜粋すると・・・
「海野宿(うんのじゅく)は、長野県東御市本海野にある、江戸時代における北国街道の宿場の呼称である。現在も通りの両側に約100棟の家が連なる歴史的な町並みを形成しており、「日本の道100選」のひとつにも選ばれている」
・・・ということだそうです。
妻と二人、海野宿を散策して蕎麦を食べて、ちょっとした寄り道というには十二分に楽しく過ごすことができました。
帰宅後にフィルムを「カメラのキタムラ」に持込みます。プリントすると1枚あたり約¥40掛かりますので、現像代プラス¥1、920ですから、万がいち光線漏れ等で写真が全滅していたら悲し過ぎますので、現像に加えて、フィルムからスキャンしたデジタルデータをCDに焼いてもらうサービスを注文しました。プリントをしない分だけ割安で、総額で¥1,188ですみました。
で、現像から上がってきたデータを見てビックリ!素晴らしいではないですか!
50年も前のレンズが描き出す世界のノスタルジックな味わいは、現代のパキパキにシャープで鮮やかなデジタルカメラでは決して描きだすことのできない世界です。
メインの通りこそ舗装されていますが、用水路を挟んで土の歩道があります。風情たっぷり。
この日は薄曇りでしたが、新録がとてもきれいでした。青空が拡がった海野宿にも行ってみたい!
郵便ポストでさえ風情があります。
硝子風鈴の涼しげな音色に誘われて、思わず立ち寄ってしまったガラス工房の「橙(だいだい)」さん。
2階はカフェになっていました。次回はぜひともカフェにも寄りたいっ!
素敵なたくさんの作品たちが、光に照らされてそれはそれは美しい。
我が家用にはブルーの気泡入りのグラスをペアで購入。甘酒を入れて飲むのです!
ガラス玉たちも美しい。
「pen D3」は、レンズに入ってくる光の量を「絞り」と「シャッタースピード」を設定して使います。露出計に表示される数字が参考にはなりますが、それらの組み合わせで写りが変わりますので、自分で考える必要があります。失敗すれば真っ白だったり真っ黒だったりする写真が出来上がります。
もっと困難なのはピント合わせ。このカメラはオートフォーカスではありませんし、ピントを確認する術さえないのです。設定は「目測」で。つまりはカメラから被写体までの距離を、自分でピントリングを動かして、カメラに刻まれているメートルの表示にあわせるのです。
オートマチックな時代にはまったくもってややこしいカメラなのですが、これらがドンピシャ自分の思い通りになったときの喜びは何とも言えません。現像してみるまで結果がわからないところも高揚感を刺激するのです。
いや、久しぶりのpenでの撮影、面白過ぎました。しばらくは旅にはこのクラカメを持ちだすことになりそうです。
元の持ち主だったおじいさんへ。これからも大切に使わせていただきます。
「ふるもの市」のスタッフのみなさんへ。すてきな出会いに感謝します。ありがとう!