2ヶ月ほど前だったでしょうか、「富士フィルム」がAPSフィルムの製造を止めると言うニュースが流れました。「写真」というアウトプットを得る手段がデジタルカメラ中心になって、「いつかは・・・」と思ってはおりましたが、実際にその時が来てみると寂しい限りです。

私はAPSフィルムが大好きでした。90年代半ばに登場したこのフィルムの規格は、今までの35mmサイズのフィルムよりもかなり小さく、画質面では不利だと言われていましたが、私のようにL判サイズにしかプリントしない人間にとってはまったく問題のないもので、それよりもその「カートリッジ」に収められた特殊な形態にから得られる利便の方が、より魅力的でした。

今までは旅先でフィルムが終わると、隅っこに行ってガサゴソとカメラの裏蓋を開けて、フィルムの先端をビローンと延ばしてカメラに装着するという一連の儀式が必要だったワケですが、APSフィルムはカメラについている小さなノブを回すと小さなフタがカチャッと開いて、そこへカートリッジをポンッと放りこむだけ。アクションが簡単であるというだけではなくて、まるでオートマチックの拳銃に弾丸のカートリッジを収めるようなそのギミックに痺れました。

90年代の終わり、海外へ旅行することになって、家族旅行用のスナップカメラとして、CONTAX Tixというカメラを買いました。コンパクトカメラのクセに10万円もする(!)カメラでしたが、その単焦点レンズが写しこむ風景や家族の笑顔は、それはきれいだったものです。

しかし・・・そのカメラは3〜4年使用したら壊れてしまいました。電化製品が壊れるととりあえず分解してみる私は、そのカメラの内部に詰め込まれた電子基盤やプラスティックの小さなギアの数々を見つめて、「これは簡単に壊れるワケだ」と納得したものです。外装はメタルで格好よく仕上げてあるものの、肝心の駆動部分は、いたって普通のコンパクトカメラと何ら変わらないのですから。

それでAPSカメラの良い代替機がないかと探していたのですが、カメラのキタムラの中古品コーナーで見つけたキャノンのIXY、何と3,000円でした。すでにコンパクトカメラの主役は完全にデジタルカメラに移行しておりましたので、当たり前と言えば当たり前ですが、なにかとんでもなく素晴らしいお宝を手に入れた気分でした。

このカメラもちょっと広角よりの単焦点レンズがついていて、その写りはバツグンでした。以来数年間、我が家の家族のスナップのほとんどを、このカメラで撮影してきたのです。




すでに数年前にAPSのポジフィルムや感度100のネガフィルムが製造中止になっていて、残された感度400のAPSフィルムを大事に使ってきたのですが、今回の完全なAPSフィルムの製造中止は本当に悲しい出来事です・・・。おまけに、最後に撮影した1本をセブンイレブンに同時プリントに持ち込んだら、「8月をもってフィルムの同時プリントサービスはやめました」というお言葉。泣きっ面にハチとは、こういう時に使うのでしょう。

近隣で同時プリントを受け付けてくれる場所がなくなって、今となっては「カメラのキタムラさん」まで行かないとプリントできない。キタムラさんだって今やスキャナーでフィルムを読み込んで、そのデジタルデータを印画紙に業務用プリンターで印刷しているだけだから、これはもうデジタルカメラのデータを、家庭のインクジェットプリンターで印刷しているのとほとんど同じなのですが、同時プリントの受付を継続してくれているだけでありがたいと思わないといけません。

今後の家族のスナップ用カメラとして、35mmフィルムを使用するオリンパスのミューというカメラが手元に残っています。もちろんレンズは単焦点で写りはバツグン。フィルムがAPSより大きいために、カメラボディが厚ぼったいのが玉にキズですが、まだまだ現役で使えるカメラです。でも、35mmフィルムも入手が簡単でなくなってきているし、毎回キタムラまで行くのも面倒だし、我が家のスナップカメラもデジタルに移行する時期なのかもしれません。時代はいつも変化を続けているのですから・・・

さよなら、そしてありがとう、APSフィルム。
たくさんの家族の思い出を残してくれたことに、精一杯の感謝を込めて。